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映画『声』とは

  物語は、重篤な病で失明を宣告された主人公が失意のうちに介助人を伴って旅に出るところから始まります。目的のある旅ではありません。いえ、移動することそれこそが目的なのかもしれません。ともかくも彼は何かに促されるように海辺の町を経めぐります。そして、その地で多くの人々に出会い、多くの声を耳にします。いえ、人の声ばかりではありません。風の音、波音、鳥の声、羽根の羽搏き、虫の声、犬の鳴声、猫の鳴声、食器の触れ合う音、足音、漁船のエンジン音、布のはためく音・・・それらは、今まで想像もしなかった豊かな世界へと彼を導いて行きます。

   『声』 人と相対して言葉を交わしている時、おくりとどけられているのは言葉の意味ばかりではありません。声はその人のすべてを含んでいます。その都度その都度人生の総量がこちらにとどけられているのです。声を介して人と人とが向き合うということは、実は途方もなく巨大で豊かで奇跡的で美しい体験なのです。映画のタイトルを『声』とした所以です。

『声』は人間の再生の物語です。

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